第3話はこちら。
福岡が生んだ大スター、博多華丸・大吉のお二人に会えるかもしれない。
そんな淡い期待とともに屋台「ともちゃん」に入店するも、そこに華丸・大吉のお二人の姿はなかった。
そりゃそうか。ふらっと寄って簡単に会えるようなお方ではないのだ。
気を取り直して、瓶ビールでカンパイ。
フードのオススメはおでんや和牛サガリ、それから串もの。
どれも美味しいんだけど、和牛サガリが特に絶品。
絶対に食べるべきでしょう。
最初はすいていた屋台も徐々に客が増えてきた。
はじめこそ席の間隔にゆとりがあったものの、人が増えるにつれ高まる密集度。
素人の俺は「もう満席じゃない?」と思った。
しかし「もう満席じゃない?」と思ってからが勝負なのだ。きっとそう。
だって店員さん、道ゆく人に向かって「あいてるよー!」とどんどん呼び込んでるもの。
屋台を拡張して無理やり席を作るが、端に座る何人かは屋台からはみ出す勢いだ。
はみ出せ!青春である(違う)
ぎゅうぎゅうの客席。
俺の隣にはサラリーマン男性二人組が座っている。
酔いに任せて話しかけてみると、一人は京都から出張に来ていて、もう一人がアテンドしているとのこと。
コンタクトレンズを作る会社にお勤めらしい。
コンタクトレンズ……メニコン…か?
わからないが、会社についてはそれ以上詮索しなかった。
僕たちは北海道から来たんですよ
北海道、いいところですよね
京都もめちゃくちゃいいじゃないですか
などと当たり障りない会話から広がって、初対面のわりにけっこう盛り上がった気がする。
なんだろうこの感じ、嫌いじゃない。むしろ好き。むしろ好きだし、とても楽しかった。
知らない人と盛り上がって楽しく飲む。これが屋台の醍醐味なのだろう。
他のお客さんは2、3杯で帰っていくなか、我々はどっしりと根を下ろして飲んだ。
もはや普通の居酒屋感覚だ。回転率を下げて申し訳ない。
トイレがないのだけが不便だった。だいたい近くのコンビニと提携しているので、催した際は店員さんに聞いてみよう。
ともちゃんの場合は通りを渡った先のファミマがそれだ。
最終的にラーメンもやっつけてやったりして。
すっかり堪能しておあいそしてみると、料金は一人三千円くらいだった。
ともちゃん、かなりよかったぜ。ありがとう。
屋台のあとは締めのデザートを食べようってんで、甘味処を求めて天神サザン通りを歩く。
カラオケやゲーセン、ラウンドワンも、一通りのアミューズメントが揃った楽しそうな通りだ。
キャッチのお兄さんに声をかけられる。
お店には興味なかったが、そのお兄さんが息をのむほどの美少年で思わず足を止める。
年のころは20歳前後か。ジャニーズ事務所にも間違いなく受かるであろうキレイな顔立ちだった。
なんともはや。男の俺でも見ほれてしまうような、ずっと見ていられる本物のイケメン。
「お兄さん、かっこいいですね…キャッチしてないでジャニーズ行った方がいいよ」
思わず口をついたが、マジで余計なお世話だったと思う。
通りを突き当たった先にジェラート屋「ViTO」を発見。
注文してすぐ、尿意が襲ってきた。
店内にトイレはないようなので、ジェラートは受け取ってもらうよう同期に頼んでトイレ探しの旅へ。
すかさず付近のコンビニに入店。しかしここにもトイレはない。
他のコンビニを数件渡り歩くも、どこにもトイレはなかった。
え、トイレがないコンビニってあるんだ…。店員さんどうしてんの…?
頼みのコンビニがダメとわかった途端、一気に焦りが押し寄せる。
近年まれにみる尿意に、膀胱にもすっかり余裕がなくなってしまった。
いよいよもって限界が近い。一刻の猶予もない感じ。
いざとなったら立ち小便も辞さない覚悟で、適当な路地裏を探す。
軽犯罪だとわかっているけれど、それでも失いたくない人間の尊厳がある。
そんな気持ちとは裏腹、適当な路地裏が全然ない。
これは…マジのマジでやばいな…!?
半泣きでダッシュしながら、やっと見つけたカラオケに入店し、その勢いのままフロントを通り抜けてトイレへ駆け込んだ。
店側としては客以外の利用はお断りだし、よしんばトイレを借りるにしても許可を得るのが礼儀だろう。
そんなことはわかっているんです!いまは人間の尊厳がかかっているんです…!
おかげで何とか危機を脱しました。
カラオケ店さん、本当にすみません。ピンチ オブ ピンチを救っていただきありがとうございました。
事なきを得るという言葉、今の俺の状況のためにある言葉だなぁ。
そんなことを思いながらジェラート店に戻ってみると、俺のアイスはすっかり溶けてほぼ液状になっていた。
悲しいが仕方がない。おしっこ漏らすよりはだいぶマシ。
失意のジェラートを食べ終え、今宵行動を共にした同期とはお別れ。
次回、単独行動となった俺が向かった先とは…!?
第5話へつづく