あ、いけね!
今日はホワイトデーじゃないか!
大変だ。何の準備もしていねぇ。朝に気づいたけど今更どうすることもできない。
俺としたことが。何て謝ろう…
あれ?
待てよ…?
よく考えたらさ…
よくよく考えたらだよ?
返す相手いなかったわ。
よかったー。
返す相手いなくてマジよかったー。
だって返す相手いたら色々準備するの面倒だよ。
女子は恐ろしい生き物だからね。
「手作りなんだー」って、お前それ売ってるチョコを溶かして型に入れただけやんかっていう代物の見返りに、恐ろしく高額なものを要求したりするからね。
そんでこっちは何日も前から彼女が欲しがっていたアクセサリーを探し回ってさ。
この雑誌に載っているこのネックレスがどうしても必要なんです!って店員さんに無理言って取り寄せたりしてさ。
安月給なのに見栄張っちゃったりしてさ。
でもまぁ彼女の喜ぶ顔を見たらそんな苦労も吹き飛んじゃったりしてね。
頑張って探した甲斐があったなーってこっちも幸せな気分に……ならねーわ!
あぶねーあぶねー。
そんな大変な思いしなくて良かったって話ですよ。
そんであれだろ?プレゼントだけだと何か味気ないから「この後食事でもどう?」っつってお洒落なレストランに行ったりするんだろ。
あぁめんどくさい。まずお店選ぶのが面倒だし。
彼女の好物はパスタだから、まずは人気のイタリアンレストランをいくつかピックアップして…
雰囲気が良くてワインのおいしいお店で、でもあまり気取らない感じのお店がいいな、とか頭を悩ますんだろ。
いざ店に入っても、彼女が気に入ってくれるかどうか気もそぞろで味がわからなかったりね。
ざまーみろですよ!ふはははは!
そしたら彼女が相好を崩して「こことってもおいしいね!こんなお店知ってるなんて、君はセンスあるなぁ」なんて言うんだろ。
いつもはビシッとしていて隙が無い彼女が、顔を赤くして「ちょっと酔ったかもー」なんていたずらな笑みを向けてくるんだろ。
かぁぁーっ!!
おい!いいねおい!そういうのい……くないわ!!
危ない。
あと少しでまんまと女子の手玉に取られるところだった。
こんな悪女にだまされなくて良かった。地獄を見ずにすんだ。
ほんともう、バレンタインデーにチョコをくれなかった女子にむしろ感謝したいくらい。
でもそんなことにも気付かないおめでたいダメ男は、彼女にロマンチックな夜景を見せに行ったりするんだろ。
するんだろ?
はい残念でしたー!!
北見の夜景、しょぼいかんな。絶景ポイントって北見霊園とか緑ヶ丘霊園とか、墓地のそばばっかりだしね。
見る価値ねーし、時間の無駄だわ。
あーほんと、色々無駄にしなくて良かったー。
こうなってくると墓地のそばでしょぼい夜景見てる男が哀れで仕方がないね。
哀れな男は夜景に飽きた彼女を帰すまいとこう言うんでしょ?
「もっと夜景が素敵なポイントがあるから行こうよ」って。
「え、見たい見たい」って頷く彼女を車に乗せて、ミルキーウェイに向かうんでしょ?
休憩3時間6,500円の看板を見てやっと気付いた彼女が
「こらー!確信犯だろー!」
ってまんざらでもなさそうに言うんですよね。
くぅーっ!!
おい!
タマランチおい!
いいぜそのシチュエーション!!
熱いねお二人さん!
ヒューヒューだよ!
もう俺っちの出番はないわ。失敬!ドヒューン
いのちにかかわるパンチをしますよ。
何調子に乗ってんの?
ほんともう爆発してくんねーかなー。世の中の幸せなカッポー。